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今年の4月、AMDが中国企業の「天津海光先進技術投資(THATI)」と合弁会社を設立し、x86 CPUの重要技術をライセンス供与すると発表した。
合弁会社は中国向けのサーバーチップを開発し、AMDは2億9300万ドルのライセンス料と、加えて今後は売上分のライセンス料を得る。中国サーバー市場ではインテルのシェアが高いが、そこに中国産CPU化でシェアを開拓する。
中国企業がx86 CPUを開発し量産することができるというこのニュースは中国国内にとどまらず、中国国外でも報じられ、日本語でも翻訳された。
今のところ、THATIからの中国製CPUは出ていないが、スパコンで知られる「曙光」が海光株の74%をもっているため、曙光から中国製CPUが搭載された製品が出てくるかもしれない。
このニュースを読む限り、これがAMDが中国企業と提携する初めてのケースのように読める。しかし、その前からAMDからライセンス供与を受けたという中国企業があり、中国製x86 CPUを発表している。
「北大衆志」という企業がそのうちのひとつ。同社は2005年10月にAMDからライセンスを供与をされたとし、「これはアメリカ政府が許可した初めてのx86の重要技術のライセンス供与である(人民日報)」としている。
北大衆志は今もウェブサイトが存在しており、サイトを見る限り「PKUnity86-2」と「PKUnity86-3」というx86 CPUと、独自開発のCPUがラインアップされている。
最初に出たのは“天道”「PKUnity-3(65)」という製品で、2010年にリリース。クロック数は1~1.5GHzで1.2GHzの際のTDPは4W。
「PKUnity86-2」は2012年リリース。65nmプロセスで、クロック数は1.1GHz、TDPは4Wと低消費電力を目指した製品のようだ。
次に出た「PKUnity86-3」は2014年にリリース。40nmプロセスで、クロック数は1.8GHz、TDPは5W。
いずれもAMDからのライセンスらしく、「MMX」ほか「3DNow!」にも対応する。詳しいスペックは同社サイトに掲載されているので興味がある人はそちらを見て欲しい。
また、同社製CPUを搭載した小型PCや、モニター一体型PCもリリースされている。だが残念ながら「何でも買える」をうたう淘宝網(Taobao)においても、その製品を見つけることはできず、購入者のレビューブログなども確認できなかった。
この北大衆志は2015年12月、内陸蘭州にある生地製造メーカーの「三毛派神」に買収される。
なんでも本業の生地が不振な中で、CPUに活路を見いだすのだとか。ただその活路を見いだすCPUというのが、三毛派神の6月の発表によると、x86ではなく独自開発のCPU「UniCore」やSoC方面とのこと。「PKUnity86」の展望は暗そうだ。
次に紹介するのが上海兆芯の「ZX-C」というx86 CPU。
こちらもAMDのライセンスを受けているとのこと。わかっている限りの情報では、TSMCによる28nmプロセス、クロック数が2GHzのクアッドコアで、2MBキャッシュ、TDPは18W。
64bit版OSにも対応しており、「SSE4.2」「AVX」「AVX2」に対応するほか、変わったところではVR機能をサポートするという。
11月頭に開催された中国国際工業博覧会でも「ZX-C」搭載でWindowsが稼働するPCを展示し、同博覧会で金賞を受賞。「3年内に100万個を量産する」とコメントするなど、今後量産が最も期待されるCPUだ。
ただ、中国の政策「中国制造2025」において、セキュアなコア国家情報ネットワークと端末が求められている中、電脳街でx86 CPU搭載PCが販売されるかというと過剰な期待は禁物である。
とはいえ、中国では今だに大きなPCのニーズがある。個人や会社の端末として利用されるほか、街で見かける大型ディスプレーやカラオケの曲選択端末や買い物のレジやカーナビなど、さまざまなところでWindows搭載PCは活躍している。
淘宝網での販売でも確認できるし、街歩きの中でも、何かの拍子にWindowsのデスクトップが大型スクリーンに映し出されたままになっていたり、ブルースクリーンになっていたりするのを見ることでも確認できる。
そうしたさまざまなニーズの中で、低価格な中国製CPUが販売されないかという期待はある。ひいては秋葉原でも時には出回ってほしいものだ。