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TBS日曜劇場「VIVANT」(日曜・午後9時)第2シーズンで、3年前の第1シーズンとは異なる動きがある。公式SNSがロケ地を続々と公表していることだ。岐阜、埼玉、鳥取…。劇中では海外とされるシーンも国内で撮影が行われたことが明かされた。情報に関して“秘密主義”だったVIVANT陣営が真逆の戦略に出ている。
2023年7月期に放送された前作は、VIVANTのロケ地巡りがブームになった。特に堺雅人演じる主人公・乃木憂助の出身地である島根県は“聖地”とされ、第1シーズンでは出雲大社や櫻井家が使用された。第2シーズンでも奥出雲町、雲南市、安来市、出雲市、松江市などで撮影が行われ、その場面が続々と登場している。
さらに第2シーズンでは、岐阜県が“新・聖地”として注目を集めている。ドラマの公式Xでは放送開始半年前だった今年1月に、「ロケ地・岐阜県恵那市」「ロケ地でお邪魔した岐阜県の岐阜市・大垣市・多治見市・中津川市」などと投稿し、早々と撮影場所を明かした。中でも岐阜県庁は、タイに逃亡した新庄(竜星涼)の潜伏先という設定で県庁1階の交流スペース「ホワイエ」が使われ、阿部寛演じる野崎がエルサレムで会食するシーンも、20階の展望ロビーで撮影された。
現地はフォトスポットとして開放され、ドラマのシーンを追体験したいファンが連日殺到している。県庁だけでなく、第11話のロケ地となった恵那市などを走る明知鉄道では「VIVANT」のラッピング車両を運行し、恵那、岩村、明智の3駅ではロゴや家紋デザインが入ったオリジナル入場券を販売。訪れた様子をXに投稿するファンも見受けられた。
VIVANTの公式SNSでは他にも、続々とロケ地をバラしている。8月16日に放送された第14話で、囚われた5人の別班員が十字架にかけられるシーン。「この撮影地はアゼルバイジャンのシェキという街にあるキャラバンサライというホテル」とホテル名まで明かした。また同23日の第15話では、架空の国「バルカ共和国」でベキの葬儀のシーンがあり、公式SNSは「ベキの葬儀のシーンは、埼玉県行田市で4000人のエキストラさんを集めて素材を撮影。それをアゼルバイジャンの風景に合成させて頂きました」と赤裸々に裏側を明かした。 “バルカ人”のほとんどは日本人だったのだ。
前作までVIVANTは撮影場所を含め情報公開を最低限にすることで、ミステリアスな世界観を作り上げてきた。第1シーズンの舞台となった架空国家「バルカ共和国」は、長期にわたりモンゴルで撮影。第2シーズンでは、アゼルバイジャンで撮影したという「ゴルバド共和国」も実在しない国だ。架空の国や組織を舞台としたフィクションだと分かっているのに、引き込まれる。得体の知れないものへの「没入感」がハマる理由の一つだったであろう。
具体的なロケ地を公表することは「没入」を妨げるリスクも伴う。ドラマの裏側を明かしすぎると、世界観が損なわれるかもしれないからだ。実際にネット上では「せめてドラマが終わってから…」「謎に包まれた方が面白い」といった声が一部で寄せられており、情報公開のタイミングは“諸刃の剣”とも言える。
それでも今回のVIVANTは、舞台裏を明かす戦略を採った。ロケ地を公表することで、人の流れを作り、経済を動かす。実際に島根県公式観光情報サイト「しまね観光ナビ」ではトップページでロケ地が紹介され、“おすすめ観光スポット”となっている。撮影協力の恩返しともとれた。
6日に放送された第17話の世帯平均視聴率17・1%は、国民的ドラマとされる朝ドラ「風、薫る」をも大きく突き放す数字だ。そうした実績も踏まえ「例え“秘密”を少々バラしても見続けてもらえるだろう」といった余裕さえ垣間見える。前作に続き、社会現象化しつつある今作の経済効果は計り知れない。
さらにJR東海、JAL、ファミリーマート、サンリオ、神戸屋などの異業種とのコラボレーションも目立つ。ドラマの枠を超え、国をまたぎ、人や経済を動かす一大コンテンツに成長したVIVANTは、画面だけでなく経験やモノを通して、ファンにワクワク感を与えている。物語とともに壮大な広がりを見せるプロモーションにも目が離せない。(小林 静香)