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「球団OB」ではない巨人の橋上監督代行の快進撃 OB監督が続く低迷球団は監督人事を変えるか

今川秀悟
6/15(月) 19:00
ベンチで喜ぶ巨人・橋上監督代行

 交流戦でセ・リーグ球団が軒並み苦戦している中、奮闘ぶりが目立つのが巨人だ。阿部慎之助前監督の電撃辞任を受け、交流戦開幕日から橋上秀樹監督代行が指揮を執るようになると、10勝6敗2分とセ・リーグで唯一交流戦を勝ち越し、交流戦前の3位からリーグ首位に浮上した。

 巨人の監督は「生え抜きのエースと4番しかなれない」と言われてきた。実際にV9を達成した川上哲治氏の後だけでも、長嶋茂雄、藤田元司、王貞治、原辰徳、堀内恒夫、高橋由伸各氏と、球史に名を刻む巨人生え抜きの名選手たちが監督に就任してきた。12球団で、球団OBだけが監督に就任する「純血主義」を守り通しているのは巨人だけだ。

 その点で、橋上監督代行は異色の経歴だ。現役時代にヤクルト、日本ハム、阪神を渡り歩き、巨人でプレー経験がない。球団初の生え抜きではない指揮官だが、指導者としての手腕は以前から評価が高かった。指導者人生がスタートした楽天で名将・野村克也監督から野球理論や戦術を学び、巨人、西武、ヤクルトでコーチを歴任。ファームリーグに参入しているオイシックス新潟で監督を務めた経験もある。

 橋上監督代行の手腕を評価する声は日に日に高まっている。巨人を取材するスポーツ紙記者がこう話す。

「生え抜きのレジェンドでないからこその強みがあります。阿部さんは存在が大きすぎて、コーチが遠慮することが少なくなかったのですが、橋上さんはコーチが意見を伝えやすい環境づくりをして、選手ともコミュニケーションを積極的に取っている。チーム内の風通しが良くなって雰囲気が明るくなったように感じます。あと、現役時代に控えの期間が長かったことも生きていると思います。ベンチにいる控え選手のコンディションに気を配り、適材適所の起用法で能力を引き出す。現在の巨人は個人成績で突出した選手がいませんが、日替わりでヒーローがどんどん出てきている。チーム全体で戦えている証だと思います」

 巨人ほどではないが、他にも球団OBを監督に据え続けている球団は少なくない。広島では1975年のシーズン途中に辞任したジョー・ルーツ氏を最後に、OBが50年以上監督を務めている。西武も、1994年限りで退任した森祇晶氏の後、30年以上、球団OB監督が続いている。

 現在の巨人を除く11球団の指揮官は、すべて球団OBだ。球団の歴史が浅い楽天では、OBではない三木肇監督が指揮を執っていたが、成績不振の責任を取る形で6月10日に休養が発表され、球団OBの塩川達也ヘッドコーチが監督代行を務めることになった。

 また、かつては、4球団で監督を務めてチームを立て直す手腕が評価された野村氏や、3球団で監督を務めていずれも優勝させた星野仙一氏のように、複数球団で監督を務める“請負人”が多くいたが、現監督・監督代行はオイシックス新潟で指揮を執った橋上氏以外、いずれも他球団での監督経験はない。

広島・新井貴浩監督

■球団OB重視は「日本独特の文化」

 メジャーを取材する通信員は「監督人事で球団OBを重視するのは、日本独特の文化です」と指摘する。

「メジャーでは、選手時代の実績と監督としての能力を切り離して考えています。現役時代に実績がなくても、球団OBでなくても、指導者として有能であれば評価される。メジャー5球団の監督を務め通算2326勝をマークした名将のジョー・トーリ氏は、プレー経験のないヤンキースで12年間監督を務め、4度のワールドチャンピオンに導いています。今年5月に亡くなったボビー・コックス氏は現役時代のメジャープレー経験はヤンキース在籍時の2年のみで目立った実績を残していませんが、指導者に転身後はブレーブス、ブルージェイズで計29年間監督を務め、メジャー史上4位の通算2504勝を挙げました。大事なのはチームを勝たせられる能力を持ったリーダーであるかどうか。球団OBではない監督が就任してもファンに抵抗感はありません。日本のファンも同じ感覚だと思いますけどね。巨人ファンが橋上監督代行への支持を高めているように、監督が球団OBであることにそこまで固執していないように感じます」

 巨人の次にOB監督が長く続いている広島では、新井貴浩監督がNPBでの指導歴がないまま23年に就任し、初年は2位で5年ぶりのAクラスに進出したが、翌24年は借金2の4位、昨年は借金20の5位と成績が悪化。今年も借金12で5位に低迷している。

 ある球団OBは「広島は監督だけでなく、コーチも長年やっている人が多く、変化を感じない。面倒見が良いチームカラーは素晴らしいと思いますが、チーム強化の観点で外部招聘も必要だと思います。新井監督の来季の去就は不透明ですが、広島OB以外の人選も検討の価値があるでしょう」と指摘する。

 生え抜きでなく他球団を渡り歩いた橋上監督代行のもとで快進撃を続ける巨人。球団は今季終了まで橋上監督代行に指揮を執ってもらい、来季の監督人事は白紙としている。来季、「純血主義」を破る監督誕生の可能性はあるだろうか。また、OB監督のもとで低迷する他球団は、橋上監督代行の戦いぶりを見てどう感じるだろうか。各球団の監督人事が注目される。

(ライター・今川秀悟)

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