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【前後編の後編/前編からの続き】
アメリカとイスラエルによる狂気のイラン攻撃は決して対岸の火事ではない。中東諸国には帰国を望む多数の邦人が取り残され、原油価格は乱高下。日本経済への影響も計り知れないが、外交と防衛が“ド素人”という高市政権の内幕を見れば不安は尽きないのだ。
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【写真を見る】「激ヤセ」が心配される高市首相 以前と比較すると「まるで別人」
前編では、イラン攻撃後の高市官邸の対応の問題点について報じた。
現在、官邸内で高市早苗首相(65)と直接、会話できる側近は木原稔官房長官(56)や飯田祐二首相秘書官(62)ら数えるほどしかいないという。しかも、その彼らも邦人保護の進め方について、首相に諫言を呈した形跡はない。
「攻撃から数日たっても、官邸内の空気はのんびりしたものでした。政府一丸となって邦人保護に当たろうという気運は盛り上がっていなかった。基本的には外務省にお任せという雰囲気だったのです」(政治部デスク)
もっとも、小泉進次郎防衛相(44)は違った。3月1日の段階でXに〈現時点で防衛省・自衛隊が第一に備えるべき任務は、要請に応じて邦人輸送を行うことですが、その待機態勢は常に整えています〉と投稿。さらに5日には〈イランを取り巻く情勢の緊迫化を踏まえ、邦人の退避が困難となる場合に備え、邦人輸送のための自衛隊機の派遣準備に着手しました〉と書き込んだのである。
元NHK解説委員の増田剛(つよし)氏は、
「自衛隊法84条の4によれば防衛大臣は外務大臣の要請を受けた場合に、邦人保護のために自衛隊機を出動させることができます。裏返せば防衛大臣は、邦人保護に関して独自に自衛隊機の出動を判断するものではありません」
と指摘する。だが結局、茂木敏充外相(70)が民間チャーター機のバックアップとして正式に自衛隊機のモルディブへの出動要請を行ったのは6日のことだった。
政府関係者が明かす。
「小泉氏は茂木氏から要請を受ける前日に〈自衛隊機の派遣準備に着手しました〉と投稿していますが、これは自衛隊法の規定に抵触する恐れがあります。小泉氏は、自衛隊が邦人救出に動いているとアピールしたかっただけなのかもしれませんが、少々焦り過ぎた。茂木氏は自分の頭越しに自衛隊機を出そうとした小泉氏に怒り心頭に発しています。木原官房長官も看過できないとして、小泉氏に厳重注意を行っています」
自衛隊機とはどういうものか。元空将で麗澤大学特別教授の織田邦男氏が言う。
「自衛隊の輸送機は乗り心地が悪い。キャビンアテンダントもいなければ、水やコーヒーのサービスも限られています。自衛隊機はいざという時のためのものです」
無論、高市首相が向き合わねばならないのは邦人保護の問題だけではない。3月19日には日米首脳会談が控えているのである。
政治ジャーナリストの青山和弘氏が言う。
「今回の日米首脳会談の主眼は3月末に訪中するトランプ大統領(79)に“中国とのディールを優先しないでもらいたい。日本を含む東アジアの平和に引き続き関与してください”と伝え、米中関係にくさびを打ち込みに行くことでした」
しかし、イラン攻撃が始まったため、高市首相は予期せぬリスクを背負うことになってしまったという。
「トランプ大統領のことですから、事務方の事前調整を無視して、攻撃への支持を求めたり、さらに後方支援や掃海活動など自衛隊の協力を要請してくる可能性もある。その時、高市首相がトランプ大統領に強く出られるかといえば難しいでしょう」(同)
明海大学教授の小谷哲男氏もこう語る。
「日米首脳会談では、ホルムズ海峡の安定確保を目的として、自衛隊の出動を求められる可能性があります。ただし、米国の軍事作戦が自衛権に基づくものか不明なため、基本的には集団的自衛権の成立が考えにくい状況です。とはいえ、補給支援などの形で自衛隊の関与を依頼される可能性は否定できません。いずれにしても、非常に難しい会談になるはずです」
問題山積の高市首相。その焦燥感はいかばかりか。
前編では、イラン攻撃後の高市官邸の対応の問題点について報じている。
「週刊新潮」2026年3月19日号 掲載