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岸谷五朗&寺脇康文が語る『Act Against Anything』の意義 深い絆の根源も「価値観が同じなんだと思う」

ナカニシキュウ
11/16(土) 20:00
寺脇康文&岸谷五朗(撮影=三橋優美子)

 岸谷五朗の呼びかけで、1993年から2018年まで開催していたエイズ啓発ライブイベント「Act Against AIDS』の意思を受け継ぎ、2020年からスタートした『Act Against Anything』(以下、『AAA』)。そのVOL.3が12月1日に日本武道館にて開催される。

 今回リアルサウンドでは、岸谷と、40年の絆を築いてきた寺脇康文の対談をお届け。初回の開催から遡りながら、そして40年のふたりの道のりのなかにおいて『AAA』とはどのような存在であったのか、楽しく語り合ってもらった。(編集部)

『AAA』は“知るワクチン”としての活動

――岸谷さんと寺脇さんは、SET(劇団スーパー・エキセントリック・シアター)時代から数えると相当長いお付き合いですよね。

寺脇康文(以下、寺脇):そうですね。五朗ちゃん(岸谷)が20歳、僕が22歳の時に出会っているから……40年ですね。

岸谷五朗(以下、岸谷):ちょうど40年だね。でも、そんなに長くいる感じはしないよね。このあいだ知り合ったぐらいの感覚ですよ。

――このあいだ(笑)。

寺脇:うまくいっている間柄というのは、そういうものなんでしょうね(笑)。『AAA』も今回で29回目だけど、全然そんなふうに思えないし。

岸谷:だからこそ、いつまで経っても新鮮な気持ちでいられるんじゃないですかね。

寺脇:やっぱり、僕にとって五朗ちゃんは必要な人なんです。彼がいなかったら地球ゴージャスもなかっただろうし、半身浴もしてなかっただろうなと思うし……いろいろなことを修正してもらってます(笑)。まったくタイプの違う人間だから、それもいいのかもしれないですね。僕にないものを五朗ちゃんはいっぱい持っていて、逆に彼にないものを僕が持っていたり。でも、根底にある「これはいい」「これは悪い」という価値観が同じなんだと思うんです。考え方は違うけれど、感じ方が一緒。だから飽きないんでしょうね。

岸谷:そうそう。1週間くらい飲まないでいると「最近飲んでないな……」って。そうなるとすぐ電話して「(甘えた声で)ねえ、いつヒマなの〜?」って(笑)。

――付き合いたてのカップルみたいですね(笑)。

寺脇:いまだに8時間くらい飲む日もありますからね。それも、ずーっとふたりでしゃべってるんですよ(笑)。よくそんなに話すことがあるなあと我ながら思うけど。

岸谷:以前、新幹線で大阪へ移動する時に我々の乗った車両がガラガラだったんですよ。でも、僕と寺ちゃん(寺脇)がふたりで隣同士に座るもんだから、一緒にいた風間俊介くんに「こんなに空いてるのに、おふたりはどうして隣に座ってるんですか?」と言われたことがあります(笑)。新大阪までの2時間半、ひたすら飲み続けて、喋り続けて。

寺脇:クーラーボックスを持って、ビールからワインまで詰め込んで乗りますから。

岸谷:寺ちゃん、優しいんですよ。チーズ剥いてくれて「はい!」って渡してくれたり。

寺脇:そんなことしたっけ?

岸谷:渡してくれたじゃん!

――すごいですね(笑)。家族でもそこまでの関係性はなかなか珍しい気がします。

岸谷:逆に、もし家族だったら「寝かしてくれよ」って離れた席に座るかもしれない(笑)。

寺脇:五朗ちゃん相手だと、「こうしたら悪く思うかな?」という心配が一切いらないし、自分の悪いところも安心してさらけ出せる。だからずっと一緒にいられるんでしょうね。

――おふたりが旗振り役を務めるチャリティプロジェクト『Act Against Anything』が、12月1日に日本武道館で開催されます。あらためて、発足の経緯から教えてください。

岸谷:もともとは『Act Against AIDS「THE VARIETY」』として1993年に始まったものです。きっかけは、当時僕がやっていたラジオ番組に届いた、HIVポジティブの14歳の女の子からの一通の手紙でした。その手紙は、「病気が怖いんじゃなくて、それを告白した時の差別が怖い」という、とても切ない内容だったんです。その差別をなくすためには、まずエイズがどういうものかを知ることが不可欠だった。そのうえで“知るワクチン”としての活動を始めたのが発端でした。

寺脇:当時、五朗ちゃんからそのラジオの話や「チャリティをやりたいんだ」という話を全部聞いていて。一も二もなく「僕も参加させてよ」と言ったのを覚えていますね。

岸谷:最初は大学の先生を呼んだり、エイズの啓発活動をしていたDJのパトリック・ボンマリートさんなどを招いて、すごく真面目なシンポジウムを開いたんです。ただ、そこにいちばん伝えたいターゲットである若者たちには、あまりきてもらえなかった。つまり、このやり方では届けるべき相手に届かないんだということがわかったんです。そこで作戦を変更して、エンターテインメントの力で人を集めて、ショーを楽しむなかで大事なことに気づいてもらおうと考えました。

寺脇:五朗ちゃんが、それはもうすごいメンバーを集めてきたわけですよ。桑田佳祐さん、原由子さん、泉谷しげるさん、TM NETWORK、CHABO(仲井戸麗市)さん、三上博史くん……今回も出ていただくサンプラザ中野くん(当時は爆風スランプとして出演)もそうですし。大きな規模でしたよね。その大きなイベントを仕切っている五朗ちゃんは、本当にすごいなと思った記憶があります。

岸谷:代々木第一体育館にしても日本武道館にしても、本来であれば我々演劇人が普通に立てる小屋ではないんですよ。いろいろなアーティストさんたちの力を借りることで初めて実現することです。チャリティとしてある程度の金額を寄付したいと思ったら、やっぱり大きな小屋で大々的にやる必要があるんです。そのことが明確になって以来、日本武道館という場所が『AAA』の拠点になりました。

――そして2020年、エイズに限定せず世界中のあらゆる困難に立ち向かう子供たちへの支援を目的として『Act Against Anything』に名称を変え、新たにスタートを切りました。ただ、初年度はコロナの影響で無観客開催を余儀なくされ、2022年にパシフィコ横浜で行われた『VOL.2』は有観客ではありつつも声出し制限があったんですよね。今回の『VOL.3』でようやくフルバージョンと言いますか、制限なしの有観客開催ができる運びとなりました。

岸谷:地球ゴージャスの公演も、今年ようやくフルでできたんです。「あ、これだな」「戻ってきたな」と感じました。おそらく武道館でもそれを感じることができるのだろうなと思いますし、もしかしたら「戻ってきた」という感覚以上のものにもなり得るとも思うんですよ。コロナ禍を経てネット配信というものが急激に発達して、生活のなかに普通にあるものとして定着しましたよね。武道館に集まってくれるお客さんに加えて、配信で観てくれるお客さんも増えれば、過去いちばん大きな寄付に繋がるかもしれない。

寺脇:いろいろな事情で当日どうしても武道館へこられない人もいるでしょうし。地方の方も配信で観ていただけますし。やっぱり、ひとりでも多くの人に来てもらいたいし、観てもらいたいですから。寄付をしても足りるなんてことはないんですけど、できる限りのことはしたいです。

――やらなきゃゼロなわけですしね。

寺脇:そうなんですよ。全然足りはしないだろうけど、だからって何もしないわけにはいかない。そういう思いでやっています。

集合体としての思いを寄付金という形で届けたい(岸谷)

――『VOL.3』の開催にあたって、おふたりのあいだではどんなやり取りがありましたか?

寺脇:ひとつルールとしてあるのは、「五朗ちゃんと僕の知ってる方に出てもらう」ということなんです。「誰に出てもらう?」というキャスティングの話からいつも始まりますね。

岸谷:出演交渉をするにあたっては、「長く続けるのって大事なんだな」と感じています。出る/出ないはさておき、「30年やっている『AAA』というイベントがあって……」と話し始めるとみんなが「ああ、あれですね!」とすぐわかってくれるんです。ゼロから説明しなくても一発で通じるから、話が早い。今回は初めて出てくれる方も多いんですが、ロバートの秋山(竜次)くんにしても堂本剛くん(.ENDRECHERI.)にしても、すべてを語らずともわかってくれましたから。長くやってきてよかったなと。

寺脇:もちろん実際の出演交渉は事務所を通すんですけど、本当に始めたばかりの頃は個人的に電話して直接お願いしてたんです(笑)。でも、いまだに大黒摩季さんだけは例外で。彼女が僕たちの芝居を観にきてくれた時に、楽屋口で五朗ちゃんが「摩季ちゃん! 摩季ちゃん! 武道館よろしく!」「……はい!」ってどさくさ紛れのオファーをしてました(笑)。

岸谷:はははは!

寺脇:それに応じてくれる摩季ちゃんはすごいよ(笑)。

岸谷:これまでの信頼関係があるからね(笑)。それに、今世界で困っている人たちや苦しんでいる人たち、戦争で泣いている子供たちを救いたい気持ちはみんな一緒だと思うんです。

寺脇:それはもちろん演者だけではなく、集まってくれるお客さんや協力してくれるスタッフも含めてね。みんな、本来の仕事を抱えながら『AAA』をやっているんです。

岸谷:エンターテインメントを通じてその全員が気持ちをひとつにして、集合体としての思いを寄付金という形で届けたいと思っています。ひとりでも多くの方に集まってもらいたいです。

寺脇:絶対にほかでは見られない特別なショーになりますので、必ずや「観てよかったな」と思ってもらえるはずです。出演者、スタッフ、観客の全員で「世界を少しでもよくしていこう」という大それた思いを持って臨みたいですね。

――一人ひとりの力は微々たるものかもしれないけど、大それたことを思ってもいいんだと。

寺脇:もう思いましょうよ、ってね。

40年続く絆は「役割が違うからうまくいってるんだろうな」

――でも、おふたりの仲は本当にいいんですね。

寺脇:もしひとつ五朗ちゃんに不満があるとしたら、「前にあそこの店行ったことあるよね!」と話した時に「いや、行ってない!」と言い張るところですね。「僕じゃない誰かと間違えてるんじゃない?」の一点張りなんだけど、いざそのお店に連れていくと「きてたね!」って(笑)。あれだけはちょっと勘弁してほしいですね(笑)。

岸谷:お店に行くまで思い出せないんだよね(笑)。寺ちゃんはね、無意識の鼻歌をやめてほしい。

寺脇:あはははは! 僕、鼻歌を歌うらしいんですよ。

岸谷:お寿司屋さんのカウンターとかでも、ずっと鼻歌歌ってるんですよ。会話もしてるんだけど、合間に「ふっふ〜ん♪」って(笑)。不満といったらせいぜいそれくらいかな。大きな不満は全然ない。

――本当に相性がいいんですね。しかも、なかなかほかでは聞いたことのないレベルというか。

岸谷:ふたりでテレビに呼んでいただいたときなんかは、もちろん楽屋は別々で用意されるんですけど、局に入って5分もしないうちに寺ちゃんが荷物を持って僕の楽屋にくるんですよ。この人、自分の楽屋を使わないんです(笑)。

寺脇:同じ仕事で近くにいるのに別々の部屋にいるのが違和感あるんですよね。

岸谷:別々である必然性がない。

寺脇:そうそう! 舞台で地方の劇場へ行ったりすると、気を遣ってくださって別々の楽屋を用意してもらうんですけど、「なんで別なの?」って。一緒にしてもらいます。

岸谷:部屋がひとつ空くから喜ばれるよね! そのぶん、ほかの役者さんが広々と使えますから。

――お笑いコンビの場合に喩えると、おふたりくらいの世代は「仲よく見せるのはかっこ悪い」という感覚が主流だったんじゃないかと思うんですよね。

岸谷:ああ、たしかにそうですね。でも、我々はむしろ仲良しアピールしたいと思ってる(笑)。

寺脇:こうやって8時間飲んでるのを自慢するくらいだから(笑)。それに、ちゃんと利点もあるんですよ。たとえば地球ゴージャスの公演をやる時に、出てくださる役者さんたちが僕たちの仲のよさを見て信頼感を持ってくれて、安心して輪の中に入ってきてくれるんです。よく言われるのが、「五朗ちゃんがお父さんで僕がお母さんだよね」って。だから「ちょっとお父さんに言うのは怖いけど……」ということは僕のところに相談してくれたり(笑)。

岸谷:(笑)。

寺脇:でも、お父さんの言うことは聞く、みたいなね。もしふたりともお父さんみたいだと、それもまたちょっと違うと思うんですよ。役割が違うからうまくいってるんだろうなあ。

そばにいれば、なんでもうまくいく気がする(寺脇)

――今後について、おふたりで話し合ったりすることはありますか?

岸谷:もちろん公演についてはいろいろ考えているんですけど、もう少し大きな話をすると、僕らの仲がいいもうひとつの理由を挙げるなら、「対峙するべきものが外側にあるから」だと思うんです。それは演劇というものであったり、舞台を成功させることであったり、それこそ『AAA』だったり。そういった強大な存在と対峙するにあたって、このふたりが仲悪い場合ではいけないんですよね。

寺脇:うんうん。

岸谷:ふたりでガッチリ肩を組んで必死に頑張らないと目的を達成できない。それだけ、常にやりたいことや目的が大きいってことなんだと思います。規模の大小ではなくて、志の大きさという意味で。

――逆に言うと、ひとりでは目指そうとすら思わないことでも、岸谷さんと寺脇さんのふたりだから「目指す」という選択肢が生まれるということですよね。

岸谷:そうですね。まわりにもよく言われるんですけど、なんだか僕にはそういう雰囲気を“撒く”習性みたいなものがあるみたいなんです。成し遂げるべき野望を常に設定したくなる。そこに寺ちゃんが乗っかってくれることで、その野望が共通の“敵”になって、それを達成することでその敵さえも取り込んで、自分たち自身も大きくなるし、目指すべきものもさらに大きくなっていく――そういうことだと思うんだよね。

寺脇:そうだと思う。五朗ちゃんはよく「寺ちゃんはいてくれるだけでいいんだよ」って言ってくれるんですよ。「寺ちゃんがそばにいれば、なんでもうまくいく気がする」って。その言葉がうれしいんですよね。

――完全にプロポーズじゃないですか。

岸谷:ははははは!

寺脇:あるときは「お前が間違っていたとしても、僕はお前の味方だ」とも言ってくれたりとか。もうシビれますよね。

――ドラマだったらいちばんいいセリフですね(笑)。

寺脇:うん、たしかに!

岸谷:最終回前くらいに出てくるやつだ(笑)!

■公演情報
『Act Against Anything VOL.3「THE VARIETY 29」』

日時:2024年12月1日(日)開場 16:30/開演 17:30
会場:日本武道館(〒102-8321 東京都千代田区北の丸公園2番3号)
出演:岸谷五朗/寺脇康文
葵わかな/秋山竜次(ロバート)/猪塚健太/.ENDRECHERI.(堂本剛)/大黒摩季/大村俊介(SHUN)/甲斐翔真/小関裕太/サンプラザ中野くん・パッパラー河合/城田優/杉山真梨佳/武田真治/中川晃教/中村雅俊/中村百花/新原泰佑/藤林美沙/三吉彩花/屋良朝幸 and more…
※岸谷五朗、寺脇康文以降の出演者クレジットは五十音順

<THE VARIETY BAND>
高木茂治/会田敏樹/高橋結子/曽根未宇司/金井央希/鈴木一葉/金山徹/寺内茂/堀江有希子
券種:チケット料金:指定席8,800円(税込)
※3歳以上チケット必要、2歳以下は膝上に限り無料/入場に関する年齢制限なし

<チケット>
プレリクエスト2次先行(抽選)
受付期間:11月7日(木)12:00〜11月17日(日)23:59
受付URL:https://l-tike.com/aaa2024/

オフィシャルサイト:https://x.com/AAA_variety
X(旧Twitter):https://x.com/AAA_variety
Facebook:https://www.facebook.com/AAAvariety

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