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11月初旬、Xでは「学祭や地方営業で手を抜く芸能人」についての話題が盛り上がったが、その際に営業で数々の実績を持ちながら“問題児”として注目を集めたのは「下ネタが過ぎる歌ネタ」でおなじみの芸人コンビ「どぶろっく」だ。
ユーザーからは「ウチの会社のイベントにどぶろっく呼んだらいつも通りのコンプラ度外視の下ネタオンパレードで会場が大盛り上がりだったのに、最終的に出禁食らってたの笑える」「近所のショッピングモールに来てたけど、ガッツリ下ネタやってて子連れファミリーの親がブチギレ顔で続々退場してたの見てウケた」などのポストが相次いだ。「下ネタ封じられたどぶろっくは陸に上がった河童みたいなもん」などの投稿もあり、ファンにとっても下ネタとどぶろっくは切っても切り離せない関係だと受け止められているようだ。
どぶろっくは、ギターの森慎太郎(46)とボーカルの江口直人(46)によるコンビだが、コンプラ至上主義のこの時代には珍しいタイプの芸人といえる。放送作家は言う。
「2019年に『キングオブコント』で下ネタ全開のミュージカル風のコントを披露して優勝を飾りましたが、コントというジャンルでは不利になりがちな歌ネタを生かしながら、緻密な計算のもとに練り上げられた芸からは、彼らの高いスキルが感じられました。コンプライアンスがどんどん厳しくなる中、下ネタで闘い続けることについて森は『ぶっちゃけごまかし、ごまかしよ』『法の網をくぐっているようなもん』と以前に語っていますが、テレビでも何度か物議をかもしています。21年、『水曜日のダウンタウン』内で行われた30秒以内のネタで勝負する『30-1グランプリ』では、どぶろっくのネタだけ“放送できるかわからない”とのことで、エキシビション扱いになっています。さらには放送でも肝心なオチのシーンにモザイクがかけられた。しかし放送後は、『爪痕の残し方がエグい』などと視聴者からは逆に評価が上がりました。ギリギリの面白さを追求してハミ出すも、結果を出してしまうところが何とも彼ららしいですね」
テレビやイベントといった場での活動は年々厳しさを増しているようだが、意外と“フィット”する場もあるようだ。
「一般層まで広く知られるようになったきっかけは、2013年のデビューシングル『もしかしてだけど』のヒットでした。当時、彼らは『ゆくゆくは芸人辞めようと思ってる』と語っていたくらい、音楽活動への志向が強かった。15年にはバンド『どぶろっかーず』を結成し、より本格的なバンドとしての活動を展開していきます。最近もインタビューで『テレビではできないような歌ネタも披露できる。ライブは自由に発散できる場所なのでとても楽しい』と語っています。どぶろっくの演奏や歌唱のレベルの高さはライブでこそ発揮できますし、音楽ファンたちにも受け入れられています」(前出の放送作家)
実際、ミュージシャンからの信頼も厚いようだ。イベント制作関係者はこう語る
「キュウソネコカミやMOROHAといった実力派バンドとのツーマンライブツアーを実施するなど、まるで音楽アーティストのような活動もしています。特に奥田民生とは相思相愛ぶりは有名でしょう。どぶろっくのツーマンライブで民生さんが対バンとして出演したり、民生さんの周年ライブにおいしいポジションで出演したりと、ミュージシャンとしても芸人としても評価されているんです。音楽とお笑いは意外と親和性が高く、ロケットマンというDJネームでも知られるふかわりょうも、かなり本気の音楽活動を展開しています。芸人ではほかにも、やついいちろうやダイノジもDJとして活動してフェスを開催するなど、音楽への造詣が深いことでも知られています」
ギターの森はソロアーティストとしても活動しており、もはや芸人というよりミュージシャンといったほうがいいかもしれない。前出のイベント制作関係者が続ける。
「音楽ファンというのは意外と懐が深いんです。ヤンキースタイルで知られる氣志團や楽器を持たないゴールデンボンバーなどに代表されるように、音楽性が高いアーティストであれば、『ネタ』っぽいバンドでも、コンプラ無視の下品なバンドでも受け入れて楽しんでしまうところがあります。どぶろっくにとって、音楽イベントはぴったりの活躍の場でしょう。芸人としてテレビで生き残れなくてもフェスやライブの世界で十分にやっていけると思います」
お笑い評論家のラリー遠田氏はどぶろっくをこう評価する。
「芸人としてのどぶろっくの強みは、音楽性の高さです。2人とも歌唱力があって演奏もうまいので、受け手が自然に彼らの音楽ネタに引き込まれていきます。笑いの基本はフリとオチであると言われますが、彼らはオチまでのフリをきかせるのが抜群にうまい。オチに向かう過程で普通に歌うだけでフリがきいて、見る側の期待感がどんどん高まっていきます。そして、それがピークを迎えたところで、どぎつい下ネタのオチが炸裂することになる。この必勝パターンを持っている限り、今後もどぶろっくの仕事が途絶えることはないでしょう」
お笑いと音楽の境界線を行き来する“二刀流”として、新たなポジションを築ける可能性を秘めているのかもしれない。
(雛里美和)