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乃木坂46「2期生」が「研究生」だった時代に描かれた“連作短編ショートドラマ”PV【乃木坂46「個人PVという実験場」第9回 1/3】

香月孝史
7/7(火) 18:02
※乃木坂46鈴木絢音/画像は本サイトの記事(https://exweb.jp/articles/-/66486)より抜粋

乃木坂46「個人PVという実験場」

第9回 山田篤宏監督作品 1/3

■2期生が研究生だった時代の三部作

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 先週(https://exweb.jp/articles/-/80634)とりあげた山下美月の個人PV『山下美月の二重奏』は、YouTubeに公開された予告編とシングル収録の本編それぞれで綴られるショートドラマを同時再生することで、立場の異なる二人の人物のやりとりを描き出すトリッキーな構造をもっていた。

 すなわち、二つの映像内の時制を完全に一致させ、同一の時間帯を複数の人物の視点から物語る手法をとった作品だった。

『山下美月の二重奏』を監督した山田篤宏はこの作品の3年ほど前、9枚目シングル『夏のFree&Easy』で企画された個人PV内でも、やはり同じ時間・場所を複数の立場から映し出すドラマを制作している。それが、『a trainee’s fugue』と名付けられた三部作である。

https://www.youtube.com/watch?v=7OiTw-hv_3I
(※研究生個人PV「a trainee’s fugue」予告編)

 タイトルからうかがえるように、この三部作の主演を務めるのは当時の「研究生」たちである。グループのデビュー3年目に入っていた当時、2期生の多くは正規メンバーとは異なる位置に留め置かれていた。AKB48グループに倣った「研究生」という呼称および位置づけ、また新規メンバーに統一的な活動指針が与えられていなかったことも含め、乃木坂46が自らのスタイルを未確立だった段階の試行錯誤を示すものといえる。

 この時期、研究生である彼女たちには一人一人の個人PVが制作されることはなく、研究生のPVは一作につき数人ずつが出演するかたちで三篇にまとめられた。三篇すべての監督を任された山田はこの形式を利用し、相互に連関するショートドラマを描き出す。

『a trainee’s fugue』の一篇となる「28日と6時間と42分12秒」では、休日の学校を訪れた鈴木絢音寺田蘭世、米徳京花の三人が、鈴木が紛失した携帯電話を見つけるため校内を探索する一コマが描かれる。

 マイペースに思索する寺田の佇まいや、ふいに軽やかなドライさを演じてみせる鈴木の表情など、今日の演者としての彼女たちに通じる芝居のありようも興味深い。

 鈴木の携帯電話探しを手伝いながら、寺田が時折ぼんやりと空を眺めているのは、昨晩観たという映画の記憶ゆえである。寺田が断片的に語るディテールやこのPVのタイトルから、その映画は2001年公開の『ドニー・ダーコ』であることがわかるが、寺田は同映画で最大の鍵となる、とある飛行機事故のイメージを反芻するように空を見上げ続ける。

 やがて、まさに空から紙飛行機が降ってくる印象的なシーンとともにこの作品は幕を閉じるが、この紙飛行機は他の二篇と本作とをつなぐキーアイテムになっている。

■それぞれの作品をリンクさせる小道具

 紙飛行機が降ってきた理由が描かれるのが、『a trainee’s fugue』の二篇目となる「手紙」である。屋上で紙飛行機を折る伊藤かりん伊藤純奈のもとに佐々木琴子が合流し、フェンスを乗り越え地上に向かって紙飛行機を飛ばすひとときがドラマに仕立てられている。

 フェンスの向こうでふざけ合う伊藤純奈、伊藤かりんの後を追って、佐々木がためらいながら二人に追いつくまでの情景は、きわめてささやかな感情の揺れを捉えたものでありながらも忘れがたい余韻を残す。

 そして、これら二篇をつなげることで、地上で探しものをする寺田たちと、屋上で遊ぶ佐々木たちとが、同じ時を共有している同級生であることが浮かび上がってくる。

 最後の三作目が、山崎怜奈渡辺みり愛出演の「里沙子を待ちながら」である。タイトルには、彼女たちと同じく研究生として在籍しつつ、学業のため撮影に不参加だった矢田里沙子の名が付されている。

 矢田自身は最後まで姿を現さず、校舎内で矢田の到着を待ち続ける山崎と渡辺の会話でドラマが進行するが、この基本構造はタイトル引用元のサミュエル・ベケットによる戯曲『ゴドーを待ちながら』と同一である。

 ただし、ゴドーの場合は彼が何者か不明であるゆえに無限の解釈に開かれているのに対し、本作は矢田という具体的な人物が設定されている。この趣向は、ドラマ制作に参加できなかった矢田をどうにか2期研究生の作品内に包摂しようとする思案でもある。彼女の「不在」を作品の主役にすることで、「里沙子を待ちながら」は山崎、渡辺、矢田の三人が“主演”する作品になった。

「里沙子を待ちながら」の中盤から終盤にかけて、山崎と渡辺のやりとりの合間に顔を出すいくつかの小道具は、それぞれに他の二篇とリンクする役割を担っている。

 それによって『a trainee’s fugue』総体が呼応し合い、全員が同じ時・同じ場所に集う者として接続され、他の個人PVにない立体感が実現した。

 山田が描いた研究生たちの物語は、もちろん前述した『山下美月の二重奏』につながる発想力を思わせるものでもあり、また一作のうちに複数メンバーの交錯を織り込む点で、のちのペアPVにみられる有機的な関係性をいち早く提示する例でもあった。

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