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AKB48ブレイクとともに迎えたアイドル戦国時代。アイドルを見て、たくさんの勇気をもらった者。その生き様に感動し、心震えた者。また、彼女たちの中には、いま第一線で活躍するアイドルの道標となった者もいる。先駆者なくしていまのアイドル界はないと言っても過言ではない。2020年を迎えたいま、アイドルに精通する著名人とともに「2010年代最強アイドル」は誰だったのか、徹底的に考えようじゃないか。
2011年の夏、乃木坂46のオーディション会場。アンダーグラフの『ツバサ』を歌う橋本奈々未の姿に衝撃を受けました。“我の強さ”を主張する媚びなさそうな瞳。前向きじゃなさそうなオーラ。少々香る芸術系な匂い。そして、まるで前世で犯した罪を拭いきれていないかのような、どこかしら申し訳なさそうな表情。「ここにいてはいけないのは分かってます。ごめんなさい」と歌っているようでした。
「こんな子がアイドル? そんな馬鹿な!」
そんなボクの思いをあざ笑うかのように彼女は見事合格。その夜、ボクは原稿を書きました。「橋本奈々未はアイドル界の新ストライクゾーンだ」と。
そして、まさに彼女の5年間は、それに尽きました。誰もが彼女の持つ不思議な雰囲気に取り憑かれ、「橋本奈々未」という新しいストライクゾーンに飲み込まれていったのです。
罪と葛藤に苦しむすべてを見せてくれた彼女。そして、乃木坂46という“救い”の中で生きた橋本奈々未。最高の人でした。
(EX大衆6月号「2010年代最強アイドル」橋本奈々未)
●PROFILE しのもと634 ライター・イラストレーター。有限会社short cut8代表。著書に『乃木坂46物語』(集英社)『HKT48成長記 腐ったら、負け』(角川春樹事務所)など多数。