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自民・維新の連携で「高市総理」は決定的か まだ残る「離党」「造反」の可能性

今西憲之
10/16(木) 08:00
国会内で会談した右から自民党・高市総裁、維新・吉村代表、藤田文武共同代表

 自民党の高市早苗総裁と日本維新の会代表の吉村洋文大阪府知事が10月15日に会談し、連立も視野に、政策協議を進めていくことで一致した。

 維新の衆院議員A氏はこう説明する。

「吉村知事の東京入りは急きょ決まった。野党同士の連携も検討していたが、政策実現のためには自民党と組むべきという流れになりつつある。明日(16日)、朝に維新の国会議員が集まって協議する予定だ」

 連立について、A氏はまだ慎重だ。

「吉村代表と高市氏の話し合い次第という部分もある。閣内で閣僚ポストをとるのか、それとも閣外協力なのか、首班指名では1回目から高市氏に投票するのかなど、決めるような段階までいっていない。ただ、維新が力をいれてきた大阪・関西万博がなんとかうまくいって、次は副首都構想、IR(カジノ含む統合型リゾート)構想と、維新の推す政策実現のために、自民党と組んでやっていく方向かと思います」

 一方、自民党幹部のB氏は、ほっとした様子だ。

「維新がうちとの連立に前向きというのは朗報だ。首班指名では1回目の投票で高市総裁が過半数をとれればベストだ」

 自民は衆院で196議席、維新は35議席を有する。あわせて231議席となり、衆院の過半数233にあと2議席となる。1回目の投票で過半数に達しなくても、野党候補の一本化は困難な状況だけに、自民と維新が連立あるいは協力することが決まれば、決選投票で高市氏が多数となって総理大臣に選ばれる可能性が高い。高市氏の後ろ盾、麻生太郎副総裁が極秘裏に無所属と会談したという情報も駆け巡っている。

 とはいえ、単純な数合わせが成立するかどうかはわからない。維新は昨年の衆院選で38議席を獲得したが、今年9月に3人の衆院議員が自民党との連立を進めようとしていることなどを理由に離党(のちに除名)して35議席となった。10月に入っても林佑美衆院議員(近畿比例)が離党届を提出し、空本誠喜衆院議員(広島4区)が次期衆院選には無所属で出馬することを表明している。

「自民党と組むとなれば、今後も離党する議員が出てくる可能性はけっこうあります」(A氏)

自民党の両院議員総会で話す高市総裁。右は麻生太郎副総裁、左は鈴木俊一幹事長

■出回った自民党の「造反可能性リスト」

 一方の自民党も一枚岩とは言い切れない。非公開で行われた10月14日の両院議員懇談会では、高市氏が「公明党が連立離脱となり、お詫びいたします」と謝罪したが、議員からは「公明との協力関係を続けてほしい」という声が続出したという。

 自民党が維新と連立を進めることになれば、公明党がますます反発するのは必至だ。公明党は、初めて議席を得た大阪を「発祥の地」として重要視してきたが、昨年の衆院選で大阪府内の4つの小選挙区で維新と激突し、全敗した。連立政権内にあったときから、公明党は維新との連立に拒否反応を示していた。

 公明党の支持母体である創価学会の幹部は、

「自民党がうちの天敵の維新と連立する方向だと聞いてびっくりだ。26年間も連立を組んできたのに、手のひら返しだ。もうこれで自民党とは当面、絶縁だろう」

 とムッとした表情で話し、こうも言った。

「自民党の衆院議員全員が一致結束できるのか。自民党には、今も選挙でうちの支援がほしいと言ってくる議員が何人もいるよ」

 公明党の斉藤鉄夫代表は、自民党と党同士で推薦などの選挙協力はしないと明言したが、

「各地域で人物本位、政策本位で応援していく。地域の信頼関係に任せたい」

 と、今後も場合によっては自民党候補者の選挙支援がありえると述べていた。

 このため、公明党の選挙協力を受け続けようと、首班指名で高市氏に投票せず、斉藤氏の名前を書くなど、自民党内で造反する議員が出るのではないかとささやかれている。

 10月11日の深夜、自民党幹部のB氏から「こんな文書が出回っている」と送られてきたのは「造反可能性リスト(26名)」と題された一覧表だった。自民党の衆院議員26人の名前が書かれている。B氏が苦々しげにぼやく。

「自民党は衆院議席196なので、首班指名でも高市氏には絶対に196票が入ると誰もが思う。それが、高市氏に入れない、造反すると噂されるわが党の議員がこんなにもいるというのは困ったもんだ」

 政局が目まぐるしく変わる展開になると“怪文書”の類があちこちで出回る。このリストもそのひとつだろうか。

公明党・斉藤代表

■「公明党には今後も応援してもらいたい」

 リストに名前がある26人の多くは、小選挙区で敗れ比例復活で当選した議員や、僅差で勝利した議員だった。つまり、公明党の推薦をもらい、その支持層からの票がないと、今後の選挙で議員バッジを失いかねない、選挙に「弱い」議員だ。

 何人かの携帯電話番号を知っていたので、鳴らしてみた。応答があったのは3人。

「そんなリストがあるの? 誰が作ったのか? 造反なんてありえん」
「ひどいリストだ。公明党の票ほしさに造反なんかするわけない」

 と全否定が続いた。

 だが、C議員は「高市さんには入れる」と否定しながらも、こう話した。

「公明党のご支援がないと比例復活もきついのは事実。離脱した公明党には今後も応援をしてもらい、議員として政策実現したい」

 公明党が連立を離脱した後、C氏は地元に帰り、地元の公明党関係者に会って話をしたという。その時の様子をC氏は詳細に教えてくれた。次のようなやりとりだったという。

 C氏「高市氏の党役員人事などでお怒りをかい、26年も続いた自公政権が吹っ飛んでしまい、言葉もありません」

 公明党関係者「高市氏の傲慢な党役員人事には腹が立つ。絶対に高市氏は応援できません」

 C氏「お気持ちはよくわかります。まず公明党さんに最大限の配慮をしてから人事をやるべきでした。高市氏というより麻生(太郎)さん主導でやった人事でしょう。麻生さんの好き勝手な人事を飲んだ高市氏もダメでした」

 公明党関係者「麻生さんは昔から公明党を外したがっていたのでしょう。別れようとサインを送ってきたのは自民党です。ただ、連立を組まないからといって、あなた(C氏)ともさようならではない。人物、政策本位、うちへの対応次第では応援することもある。これからの対応を見て考えます。なんせ26年間も自民党とはやってきた」

 公明党と良好な関係を築いてきたC氏は、維新との連立を進めることで、公明党の支援がなくなりかねないと心配しているようだった。自民党内から造反が出る可能性は、否定しきれないのではないか。

大阪駅前で演説する国民民主党・玉木代表

■「しばらく政権交代はないのかな」

 一方、立憲民主党を中心に、野党も政権交代を目指して結集を図っていた。立憲民主党の野田佳彦代表は、

「十数年に1度しかない、自民党を引きずりおろすチャンスがきた」

 と政権交代への意欲を示し、安住淳幹事長は国民民主党の玉木雄一郎代表を念頭に、

「野党で統一候補を擁立したい」

 と国民民主や維新に働きかけていた。

 その玉木代表は、10月11日、JR大阪駅前で演説して、

「私は国民民主党の公党の代表として、内閣総理大臣を務める覚悟がいつでもあります」

 と、野党が結集できれば総理大臣となる可能性を否定していなかった。

 だが、15日に維新が自民党と連立に前向きになったという報は、永田町にすぐに広まった。

 立憲民主党の幹部は、ため息まじりに漏らした。

「維新が自民党に行くのか。しばらく政権交代はないかな」

■「政権をとるためにはなんだって自民党はやる」

 政治評論家の田村重信氏はこう話す。

「かつて自民党は、まったく政策が違う社会党と組んで政権を維持したこともあった。政権をとるためにはなんだってやる、そういう党なんですよ。立憲民主党と国民民主党が基本理念がどうだと後手に回っていたところを、自民党がうまく維新を引き込んだんでしょう。維新は自民党が困っているとき、一番、高く売れるタイミングで吉村代表自身が出てきて、高市氏と会談して方向性を決めた。お互いウィンウィンの関係です」

(AERA編集部・今西憲之)

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