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【全2回(前編/後編)の後編】
参院選での躍進後も勢いは止まらず、目下、世論調査では自民党に次ぐ支持を集める参政党。それにしても、この新興政党の勢力拡大には、不可解なところも多い。しかし、取材を進めて判明したのは、かの党とマルチ商法の驚くべき共通点の多さだった。
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【レア写真】「とにかくモテていた」 神谷宗幣代表の「卒アル写真」
前編【参政党の“ランク制度”の考案者が「確かにマルチっぽい」と明かす 「怪しげな健康食品や1万円するシャンプーが売られていた」証言も】では、問題視された参政党の「ランク制度」の原点や、神谷宗幣代表(47)がかつて立ち上げたイシキカイカク株式会社で売られていた“怪しげな商品”について詳しく報じた。
また、彼らの十八番(おはこ)である“イチ、ニ、参政党!”のかけ声になじめない人も少なくあるまいが、
「このかけ声を提案したのは、神谷さんと古くから活動を共にする参政党員です。結党から2~3カ月後に行われたタウンミーティングで、その党員が“ちょっと披露したいものがありまして。イチ、ニ、参政党! どうでしょう?”と。これがウケて、締めのコールとして定着しました。アントニオ猪木から着想を得たそうです。その提案者も、ネットワークビジネスを手がけた経験があると言っていました」(参政党関係者)
もっとも、参政党としては、党内でのマルチ商法を禁じている。
「昨年4月、ある党所属議員がネットワークビジネスに関与して懲戒処分を受けたと発表があった。特に問題視されていたのは、党のイベントにビジネス関係者を招き、講演会を開いたこと。党としてそのビジネスを支持していると誤解されるのを怖れたのでしょう」(前出の党関係者)
続けて、こうも言う。
「神谷さんは結党時から、党内のマルチ勧誘には厳しい目を向けていました。“僕は今までに、何度も自分の団体を乗っ取られそうになったことがあるから、くれぐれも注意してほしい”と。つまり、党外でネットワークビジネスをやって党員の勧誘に役立てるのはかまわないが、党をビジネスのために利用するのはご法度、というわけです」
にもかかわらず、多くのマルチ関係者が集まるのには理由が。
「神谷さんは常々“会社に所属すると仕事で忙しいし、周囲の評判もあるので政治活動がやりにくくなる”と言っています。そして“個人事業主や経営者であれば、政治活動もやりやすい”と。取り立てて技能があるわけでもない人にとって、ネットワークビジネスは、党員として活動するのに都合が良いし、党勢拡大に一役買っているのは間違いありません」(前出の党関係者)
悪質商法に詳しいジャーナリストの多田文明氏が解説する。
「マルチ商法は販売網がピラミッド型の構造になっていますが、そのコミュニティーの結束は非常に強く、外部に対しては排他的、攻撃的になります。例えば、他者から“マルチはやめた方がいいよ”など批判的なことを言われると、激高するんです」
つい先頃までの選挙戦で、散々目にした光景ではないか。
「また、マルチ商法では、ピラミッドの中の上意下達が徹底されていて、上位者の意見が絶対視されます。上の人が何か主張すれば、その事実関係を調べることもなく、コミュニティーのみんながその話を信じてしまうのです」(同)
これもまた、思い当たるフシばかりである。
それだけではない。参政党は結党時、党員に向けて〈参政党DIYスクール〉なる政治塾を創設した。ホームページでの紹介文は、
〈今、日本は『運命の分かれ道』に直面しています。世界のリーダーとして再び返り咲くか、激動の変化の波に飲まれ、深く沈むか。進む道は2つに1つです〉と始まる。
「二者択一の形で、危機感をあおって迫るのは、いかにもマルチ的な勧誘の手法です。発想は二極で、敵か味方か、正しいか正しくないか、やるかやらないか、二択で決断を迫ってくる。これは旧統一教会など、カルト宗教でも用いられます」(多田氏)
例のかけ声や隠語にも“効能”があった。
「(党のことを)“ダイダイ”と仲間内だけで通じる隠語を使うのも、“イチ、ニ、参政党!”とかけ声を上げるのも、グループの結束を高める方法です」(多田氏)
活動のありようがマルチ商法と酷似している点について、参政党に質すと、
「抽象的かつ主観的な見解に基づくものであり、本党としてはそのような評価には当たらないと認識しております。本党は国政政党であり、マルチ商法組織とは根本的に相違します」
多田氏が憂える。
「保守票が入った、なんていわれていますが、ランク制度から二者択一まで、ネットワークビジネスとの類似点が多い参政党に、たとえわずかにしろ一部の国民があおられ、知らず知らずのうちに票を投じてしまったのかもしれませんね」
マルチ商法は人間関係を壊すといわれている。参政党が壊すのは一体……。
前編【参政党の“ランク制度”の考案者が「確かにマルチっぽい」と明かす 「怪しげな健康食品や1万円するシャンプーが売られていた」証言も】では、問題視された参政党の「ランク制度」の原点や、神谷代表がかつて立ち上げたイシキカイカク株式会社で売られていた“怪しげな商品”について詳しく報じている。
「週刊新潮」2025年8月7日号 掲載