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北朝鮮が先月4日と28日に発射実験を行った大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星14」型のエンジンは、ウクライナの工場から流出したものである可能性があると米ニューヨーク・タイムズが報じた。
国際戦略研究所(IISS)のミサイル専門家マイケル・エレマン氏の報告によると、北朝鮮が2年間失敗を続けていたミサイル実験がここへきて成功したのは、ロシアのミサイルプログラムと関係のある工場が制作した強力なエンジンをブラックマーケットで入手したことで成功したと見られるという。
同氏はまた、「火星12」「火星14」型に装着された液体燃料ロケットエンジン(LPE)が、旧ソ連製のRD−250と同じ系列だと指摘した。
このエンジンが制作されたのは、ウクライナのドニプロ(ドニプロペトローウシク)にあるユージュマシュ工場で、旧ソ連時代からウクライナ独立後の今に至るまで、ロシアのミサイルを制作してきた。
エレマン氏は、親露派のヤヌコーヴィチ前大統領が2014年に退陣に追い込まれた後、経営が苦しくなった工場が、北朝鮮と手を結んだ可能性があると指摘した。この工場は、ヤヌコーヴィッチ氏の前任者、クチマ元大統領が工場長を勤めていたことがあり、政権と深い関係があると言われている。
この報道について、ウクライナは全面的に否定した。
ウクライナ政府の安全保障会議に当たる国家安全保障・国防会議のオレクサンドル・トゥルチノフ書記は、報道は根拠がない、ロシアの情報機関が罪を覆い隠すために行ったものだと否定した。また、ウクライナ政府は国際社会の対北朝鮮制裁を全面的に支持するとも述べた。
また、ユズマス工場も声明を発表し、ウクライナが1991年にソ連から独立後、軍用ミサイルやミサイル複合体を生産したことはないと主張した。
工場のあるウクライナ東部は、2014年に始まった内戦の舞台となっている。ドニプロでは戦闘は行われていないものの、東側に隣接するドネツィク(ドネツク)州は事実上の独立状態になり、散発的な戦闘が続くなど、混乱が収まっていない。