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高齢者のセルフネグレクトとの向き合い方

 ゴミ屋敷や孤独死などの根底にある問題ともいわれるセルフネグレクト。その事例を見ると、ごく普通の生活をしていた人が陥ることも多いよう。ただ、若者や中年層のセルフネグレクトと、背景が大きく異なるのが高齢者の問題。まずは一番身近な自分の親、そして自分自身の老後のためにも、正しく理解しておきたい。

突然、ゴミ屋敷になるわけではない

  ◇   ◇   ◇  

決して望んだわけではない限界を超えた先の生活後退

「私はこうした状態を、高齢者の“生活後退”と呼んできました」と語るのは、高齢者の生活問題や社会孤立問題について長年研究してきた立命館大学特任教授・小川栄二先生。セルフネグレクト(自己放任)という言葉には、自ら望んでそうなっているニュアンスが含まれますが、高齢者の場合は、そこに至る背景が人によって違うのだとか。

「加齢による体力や生活意欲の衰えにより、家事全般が十分にこなせなくなり、家の中にゴミがたまり、生活の質が低下していきます。そんな状態に対して、実は高齢者自身もなんとかしなければいけないと思っているのですが、ある程度の状態を超えてしまうと、自分の力ではどうにもできなくなってしまうのです。そこで頼れる人がいればいいのですが、周囲との交流が薄く、孤立状態にあったり、また誰かいたとしても、「助けてほしい」と言えない場合が多い。なぜなら、誰だって汚れた家の中や自分が出したゴミを人に見られるのは嫌ですよね? 見られたくないから支援を拒否。その結果さらに部屋の中や生活状態が乱れていく……という悪循環に陥ってしまうんです」

 つまり、高齢者本人が声をあげることが少ないため、親族や周囲の人にも気づかれないまま、深刻な生活後退に陥っていることは予想以上に多いのが現実。認知症などの疾患がない場合でも、少しずつできないことが増えていくことで誰にでも陥る可能性があるのです。

衛生面、健康面、精神面すべてを脅かす荒廃した生活

 高齢者におけるセルフネグレクト=生活後退とは、具体的にどんな状態を示すのでしょう?

「人によって内容や程度の違いはありますが、身の回りのことを、やれなくなって生活が悪化している状態です。例えば家の中の掃除をしなくなり、古新聞や雑誌が雑然と積み上げられ、それが数十センチの高さにまでなる。さらに、食べ残しの食品などがそのまま放置され、ゴキブリやネズミ、ネコの死骸、排泄物などにまみれて暮らしていたケースを目にした経験もあります。また、清潔さへの関心も薄れ、洗濯していない服をずっと着続けていたり、失禁して汚れた下着もそのまま、入浴も長期間していない。食事に対しても無頓着になり、カップラーメンや菓子パンなど、健康とはほど遠い貧困なメニューばかりを食べ続けたり、食欲自体が低下している人も多く見られます」

 ニュースなどで見かける、家の外にまで物があふれだし近所から苦情がでるようなゴミ屋敷は、目につきやすく地域の迷惑問題と見られがちですが、これも高齢者が抱える生活後退の中の特に激しいケースといえます。

「ただ、外からもわかるようなケースというのはごく一部で一見、普通に暮らしているように見えて、ドアを開けてみると家の中がすごい状態になっていた、というケースのほうが圧倒的に多いですね」

 その実態を知るほどに、親や親戚、自分の身近な人がなってしまったら……。そんな不安を抱く人は多いはず。

「まず何より、そんな状態にならないための事前の対応が大切です。ゴミ屋敷ひとつとってもひと晩でそういう状態になることはありません。相当な期間を経ているはずなんです。ですから、高齢者本人が孤立しないよう、普段から関係を作っておくこと。たとえ離れて暮らしていても、せめてお盆とお正月ぐらいは親のところに顔を出すなど、できることはあるはずですから」

 ちなみに、6か月たつと人によっては結構ひどい状態になる場合もあるそうなので、交流の目安として肝に銘じておきたい。

いざ陥ってしまったとき誰がどう対応するべき?

 実際、自分の親がある日、そんな状態になってしまっていたら、動揺のあまり思わず叱責してしまうかもしれません。しかし、小川先生によれば、それは一番やってはいけない行動だそう。

「頭ごなしに非難するのは絶対にダメです。本人が自覚をしていない場合には不当な非難をされたと思いますし、多くの場合には、軽い認知症があっても、この状態があまりよくない、なんとかしたいと思っていることのほうが多い。わかっているけどやれなくなっているんです。そんな本人の葛藤を無視して一方的に非難するのは、関係を悪くするだけです。また、いくら気持ちを抑えて接することができたとしても、昔からの関係性がありますから、子どもは対応しにくいんです」

 まず対応するときの基本的な姿勢として重要なのが、本人の意思や人権を尊重すること。

「例えば、周囲の人間が話をしたり支援を行う場合にも、やはりもともと関係のよくない人ではうまくいかないですよね。本人が何らかの形で尊敬している人などのほうが、話を聞き入れやすいと思います。またご本人がもと先生だとしたら、その方を慕っている生徒さんやお弟子さんなどでも心を開きやすいかもしれません。あとは、役所の方、医師、保健師さんなど関わっていただく可能性のある方はいろいろいらっしゃいますが、ご本人のなじみの関係を優先し、適切なキーパーソンを確保することが有効です」

抱え込まずにまずは相談地域包括支援センターへ

 公的な相談先としてまず足を運びたいのが『地域包括支援センター』。

「孤立し拒否的な人には、京都市では、『地域あんしん支援員』という事業があり、行政処分をするだけではなく、その人の立場に立って支援する活動を行っています。ただし、どの地域でも行政が直接対応してくれるとは限らないので、まずは地域包括支援センターや福祉事務所、保健所で、どんなサポートが受けられるか相談をしてみるといいと思います」

 さらに、これまでケースワーカーや地域ボランティアとして、生活後退の現場に関わってきた小川先生が、非常に頼りになる存在だと考えているのがホームヘルパー。ホームヘルパーとは、在宅の高齢者や障害者宅を訪問して、入浴、排泄、衣服の着脱や移動などの支援といった介護サービス、さらに調理、洗濯、掃除、買い物などの援助や代行といった家事援助サービスまで幅広く手がけるホームヘルプ事業の第一線で働く方々。

「ホームヘルパーさんは、家事や生活に直接関わることができ、専門的な知識も持っているので、高齢者の生活に定期的に関与してもらうことで、その後のリバウンドも防ぐことができます」

 ホームヘルパーの派遣は、要支援・要介護者については介護保険制度により利用できます。まずは各市町村の窓口または地域包括支援センターで手続きをして要介護認定を受け、地域のケアマネージャーとともに立てるケアプランの中で、ヘルパー事業所との契約について相談してみて。

 ベテランホームヘルパーである京都ヘルパー連絡会の櫻庭葉子さんも、その重要性をより多くの方に伝えたいそう。

「ヘルパーは、時間をかけて利用者さんとの関係性を築きひとりひとりに寄り添いながらサービスを行っています。ヘルパーが関わることで利用者さん自身も成長され、ご自身の生活を取り戻した方も多くいらっしゃいます」

 現在、国はホームヘルパーによる家事支援を排除し、その仕事を家事代行業者に担わせたい方針を示しているそうですが、今後、さらに高齢化が進む日本の未来を見据えたとき、本当に求められる支援とは何か、改めて考えたいテーマです。

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