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「たんけんぼくのまち」から34年、チョーさんから“大きくなったお友だち”へ

金城珠代
5/5(土) 11:30
チョー(ちょー)/1957年埼玉県生まれ。俳優、声優。代表作に、チョーさん役で出演したEテレ「たんけんぼくのまち」、「いないいないばあっ!」のワンワン役(スーツアクター兼声優)、アニメ「ONE PIECE」ブルックなど。オフィシャルブログ「きのう チョー あした」も更新中(撮影/AERA dot.編集部・金城珠代)

 これほど存在感のあったスーツアクターがほかにいるだろうか。NHK・Eテレの乳幼児向け番組「いないいないばあっ!」の人気キャラクター、ワンワン役の演技だけでなく声も担うチョーさんが去年、還暦を迎えた。いまから34年前、NHK教育テレビ「たんけんぼくのまち」で楽しそうに街の地図を描く、丸メガネにキャップ姿の若かりしチョーさんを覚えている人も少なくないだろう。あのとき、テレビの前で見ていた“大人になった子どもたち”へ、「頑張っていますか?」と60歳の先輩からのメッセージをもらった。

【動画】チョーさんがパパやママになった"お友だち"に伝えたいメッセージはこちら

*  *  *

――毎年、春になると親たちの間では「ワンワン引退説」が不安とともに広がります。去年はチョーさんが還暦を迎え、ワンワンと一緒に子育てをしてきた親にとっては心配な節目だったと思います。

 そうですねー。若い役者さんはいくらでもいますからね。でもワンワン役の話が来たときに、「辞めてください」と言われるまでは、自分からは絶対に辞めないことにしたんです(笑)。死ぬまでやるつもりで。それがたまたま20年以上も続いて、僕はラッキーなんですよ。

 26歳から「たんけんぼくのまち」でチョーさん役を8年間やったんですが、当時はまだ若くて、4年続いたころに、このままではダメなんじゃないかと思い始めたんです。子ども番組以外でも挑戦してみたい……って。だから自分から「辞めさせてください」って言って、8年で辞めたんです。

 でも、その後、結局ドラマや映画という方向は皆無でした。そのときに自分から辞めちゃいけないんだなって実感したんですよね。「チョーさんやってよ」って言われている間は「はい、やらせてください」と言う! 「自分の方向性が……」とか偉そうなこと言って、辞めたいなんて言っちゃだめって思ったんです。

(スーツアクターで)自分の容姿が表に出ないっていうのはいいですよ! 顔は劣化しますから。アハハハ(笑)。お父さんお母さんが「ほらワンワンよ!」って言っても、この顔だと子どもたちはキョトンですからね。

――若いころから俳優を目指していたんですね。

 もともとは国語科の教員志望で大学は文学部だったんですが、大学時代に勧誘されるまま落語研究会に入ったんです。落語のことはまったく知らなかったんですが、初めて人前でしゃべるとそれが意外と面白かった。落研の仲間に成城学園に住んでいる友だちがいて、「ここが加山雄三さんの家だよ」「ここは三船敏郎さんの家だよ」って教えてくれるんですよ。こんな豪邸に住んでいる人がいるんだ、さすが銀幕のスターだな、テレビに出ている人はすごいなーって。全然関係ない世界だなっていうちょっとした寂しさと人前に出る楽しさが重なって、自分も何とか這い上がっていけば、ちょっとでも近づけるかなと思っちゃったんですよね。10代の甘い考えで、アハハハ(笑)。60歳になった今でも賃貸なんですけどね(笑)。

 勉強しなかったせいなんだけど、4年生の夏に教員採用試験に落っこちちゃって、卒業までやることが無くなちゃったから夜にやっている研究所があると聞いて、青年座に行き始めました。

 そしたらハマっちゃったんですよね。面白い!って。大学卒業すると同時に、文学座研究所を受けて、「落ちたら役者の世界に進むのはやめよう」と思っていたのに、受かっちゃった。「何のためにお金をつぎ込んできたのか!」とおふくろも泣いていました。地元で教師になって確実な生活をすると思っていたでしょうからね。

――研究所ではどんな役を?

 役というより、基礎ですよね。台本をもらってしゃべったり、マイムや寸劇をやったり。そのときに出されたお題を自分でどう考えて演じるか。学芸会みたいなものでしたけど、それが楽しいんですよ! 研究所を出た後に、自分たちで劇団を立ち上げて、お金がないから自分たちで脚本を書いて、構成して、演じるわけです。稚拙ながらもものを作り込むのは慣れていたので、「たんけんぼくのまち」のチョーさん役のオーディションでも設定を与えられたら、それに対して勝手に自分で世界を作って動くことができたんですね。

――そういう経験が、いまのワンワンのキャラクターにも出ているわけですね。

 そう、どちらかというと一人芝居なんです。

――これまでにも『ONE PIECE』のブルック役や、映画『ロード・オブ・ザ・リング』のゴラム役など、声優の仕事もされていますが、そのきっかけは?

 最初は食べるためでしたね。「たんけんぼくのまち」が終わったのが34歳のころ。アルバイトと貯金を切り崩して生活していて、このままだと食べていけないと思ったので、たまたま芝居を見に来てくださった声優事務所のマネージャーさんに声をかけられてラジオのCMに出させてもらったんです。当時はバブル期で30秒や1分のCMを演じただけでいままでアルバイトした数倍のお金をいただけて、これはいいなと思って(笑)。事務所に入って本格的にやろうと思ったのは30歳過ぎてからです。

――「いないいないばあっ!」は2016年に20周年を迎え、ワンワン以外にも「パクパクさん」や「パクコさん」など、チョーさんなしでは成り立たない番組になっています。

 僕はラッキーですね、ありがたいことです。だから、自分以外の人が「ここが合ってるよ」「チョーさんやってよ」って言ってくれることは、信じたほうが良いって思っています。30何年やってきてようやくわかりました! 自分を過信しちゃいけないって(笑)。

――番組では結構激しいダンスや屋外を走るシーンもあり、コンサートでは全国各地を回っています。体力維持の方法は。

この仕事を始める前から、日課として毎日10キロ走っているんですが、体力維持の方法はそれだけですね。

――この仕事を通して、伝えたいことや叶えたいことは。

 実は、それもない!(笑)だって子どもたちに夢を与えるとか、こんな思いを持ってほしいとか、そんな偉そうなこと言えないですよ。おこがましいというか。自分がやってて楽しいからやっているんです。こちらはエネルギーを出すだけで、それを受けて止めてくれたら嬉しい。

 あとは周りの反応が楽しいんですよね。スタジオだったらスタッフさんたち、イベントだったら来てくれているお父さんお母さん、おじいちゃんおばあちゃん、子どもたちの反応を見るのが楽しいんですよ。それが無かったら続かないでしょうね。

 だって、みんな楽しそうにワンワンのことを見てますもん。ママ、パパ、楽しそうだな~、若いな~、パワーあるな~って思っています。ウフフ。だから、かえって僕がパワーを貰っているんですよね。無反応のときほど怖いものはなくて「失敗したなー」と思うんです。

 アニメの(声優の)仕事では本番録音の時の反応がわからないんですよ。テストのときは周りの役者さんが反応してくれるけど、本番になるとスタジオがシーンとなっちゃう。反応が無いからこれでよかったのかどうかもわからない。悪い反応でもあれば、次はこうしようかなという気になります。

「ワンワンわんだーらんど」のようなイベントで行くと、その時の会場やお客さんの層、土地柄、季節でも反応が違います。みなさんの体調もあるだろうから。その反応によって「やっぱりやってよかったな」て思うこともあるし、「やらなきゃ良かった」って反省したり。

――イベントでは子育て中のお父さんお母さんに会場で触れ合うこともありますよね。20数年間で変化はありますか。

 やっぱりね、「あれ!?こんなにみなさん若かった!?」って思う。アハハハ(笑)。前はちょっと自分に近い感覚でやっていたのが、最近のママさんパパさんって若すぎない?って思っちゃう。それって自分が思いっきり年を取ってるんですよね。それに気が付かないんですよね。

――幼い頃に「たんけんぼくのまち」でチョーさんを見ていた方たちが、20代後半から30代になっています。社会に出て、今度は親としてワンワンを見ているかもしれません。何かメッセージがあればお願いします。

 いろんなことがあると思うけど、続けることです。あとは、考え過ぎないこと。ノーテンキにポジティブになっている方が良いですよ。

 僕は何か落ち込むようなことがあっても、次の日に走ると消えちゃうんですよね。それって、おひさまの力だと最近思うんです。

 朝、走りながら考えたり、いい天気の日に外で考えているときって、どちらかというとポジティブなものを考えている。おひさまって大事だなと思うんですよね。外で深呼吸しながら「もっとパワーを!私に!」って。そうするとね、まあいいや!って思うんですよね。

 しんどいことがあっても、楽しい瞬間があったら、そっちの気持ちがずっと続いていく感じ。お子さんや家族の顔を見て、生きててよかったって思ったりするでしょう? その瞬間があれば今日はいいや、明日もその顔が見られたらいいなって。僕もかみさんと喧嘩したら、いいときだけを思い出すんですよ。こんなに良くしてくれるもんなーって(笑)。

 怒ったり、気分が落ち込んだりしているときは、ちょっとその場を離れる。外の空気を吸ってくる。もんもんと一人で考え続けちゃダメです。外でおひさまの光を浴びるといい。1分でも2分でも。ちょっとボーッとすれば、今日はまずかったなーって思うわけですよ。

 お気楽に。考えすぎずに。明日はもっと良いことあるよ。

(聞き手/AERA dot.編集部・金城珠代)

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