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南シナ海に浮かぶ海南島の省政府に対して、中国政府が1949年の共産党政権発足後、初めてとなる競馬の興行を認可する方針を伝えたことが明らかになった。
中国の習近平国家主席は4月中旬、同省で重要会議を開催し、海南省全域について、規制緩和を先行的に実施する「自由貿易試験区」にすると明言しており、それに伴う例外的な措置とみられる。すでに、中国内で唯一、競馬が実施されている香港のジョッキークラブが同省に協力を申し入れている。
中国では1970年代末に改革・開放路線を導入して以来、競馬の興行を許可する動きが出ており、国民党政権時代に競馬場があった広東省や上海市、杭州市、南京市などに競馬場を建設する計画が進められてきた。
実際には、1992年に広東省広州市に競馬場がオープンし、試験的に競馬レースが行われたが、その7年後、「満足すべき結果が出なかった」などの理由で、競馬場は突然閉鎖された。これは、当時の指導部内の保守的な勢力から「資本主義の復活だ」などと批判が噴出したためとみられている。
2008年の北京五輪では、馬術競技は唯一競馬が行われている香港で開催されたが、その後中国大陸内での競馬公認の動きはほとんどなかった。
ここにきて、海南省における競馬興行の許可の方針が示されたことについて、香港の英字紙「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」は専門家の話として「習主席が海南省全域を自由貿易試験区に指定するに当たり、上海など他の11カ所の地涌貿易区にはないユニークな事業を海南省で行うことで、独自性を打ち出すとの狙いがある」と報じている。
海南省は面積が3万5000平方キロにも及ぶ南シナ海上の大きな島で、『中国のハワイ』と呼ばれるなど、中国政府は観光業に力を入れている。人口も930万人を擁しているが、農業以外には独自の産業はほとんど育っていない。
今後の海南省の開発について、『習近平の正体』などの著書もあり、中国問題に詳しいジャーナリストの相馬勝氏は次のように分析している。
「海南省ではこれまでの競馬以外にもカジノなどのギャンブル性の強い娯楽施設を認可する動きも出ており、中国政府は海南省を世界中から観光客を呼ぶことができる一大リゾートとして売り出そうとしている。地理的にも海に浮かんでいることから、中国大陸内の他の省市に与える影響が少ないとの利点もある。競馬場建設はその先駆けであり、習近平主席の強い意向が働いているのは確実だ。このため、海南省では今後、他の地域にない革新的な規制緩和措置がとられる可能性が高い」