元力士・舞の海氏が野村證券を相手に巨額の損害賠償請求を起こした...！「節税」と見せかけて「脱税指南」...「電気料金削減サービス」の驚きの手口

うまい話には裏があるとわかっていても騙されてしまうほど、令和の手口は手が込んでいる。150億円ものカネが動いた投資事件を追う。

舞の海氏が巨額の損害賠償請求訴訟を起こした

現役時代に「技のデパート」の愛称で知られ、現在はNHKの大相撲解説者として活躍する元力士の舞の海秀平氏（57歳）が、多額の出資金トラブルに巻き込まれていたことが明らかになった。

舞の海氏は「リスクを十分に説明せず、多大な損害を被らせた」とし、業界最大手の野村證券と監査・税務アドバイザリーの南青山FASに対し、計6453万円を求める損害賠償請求訴訟を起こしており、今年5月にも第1回弁論準備が行われる予定だ。

トラブルの始まりは約3年前に遡る。舞の海氏の代理人弁護士が、経緯を説明する。

「舞の海氏はもともと投資などに関心があったわけではありませんが、コロナ禍に入って仕事が減り、将来の見通しも暗いなかで、野村證券に資産運用の相談を行うようになりました。その際、舞の海氏の担当者となったのがA氏でした。

両者の付き合いが1年ほど経った'22年2月頃、A氏は『節税効果のある投資案件があります。特別なお客様にしかお伝えしていませんが、舞の海様なら事業主を直接紹介できます』と舞の海氏に持ちかけた。そして引き合わされたのが、投資案件の事業主であるBUONO社の代表だった首藤弘と、南青山FASの会計士でした」

節税スキームの内容とは

首藤弘とは、'24年2月に東京地検特捜部に法人税法違反（脱税）などの疑いで逮捕され、翌月には複数の会社経営者への脱税指南を行った容疑で再逮捕されている人物で、すでに起訴もされている「被告」である。しかし当然、当時の舞の海氏は、首藤被告の素性については知る由もなかった。

面会場所は、東京・大手町の野村證券本社内。舞の海氏に対し、首藤被告が熱弁を振るって提案してきたのが、「一粒で2度美味しい」投資話だった。

BUONO社がメイン事業としていたのが、「電気料金削減サービス」である。このサービスについては後述するが、首藤被告が提案してきたのは、舞の海氏側がBUONO社と取次店契約を結び、同サービスの取次営業を受託する、というものだった。

ただ、実際の営業活動は首藤被告が実質的に経営する営業代行会社に「委託」。委託料は取次手数料によって3年ほどで回収できるうえ、一括損金として経費計上できる。この「委託料を損金として経費計上することで節税になる」というのが、首藤被告の説明だった。

幻に終わった節税スキーム

いかにも怪しい案件だが、話を聞いているのは一流証券会社の本社で、同社の証券マンも同席している。しかも、税務の専門家である南青山FASの会計士までも「税法上、問題ありません」と明言していたという。

結果、舞の海氏は自身が役員を務める舞の海カンパニーとBUONO社との取次店契約を結ぶことを決断し、'22年4月に首藤被告の営業代行会社に計6600万円を委託料として支払ったのだった。

しかし、予定通りに取次手数料が支払われたのは最初の2ヵ月のみ。'23年1月以降は支払いが停止した。

そして、この案件のもうひとつの「旨み」だったはずの節税効果も幻に終わる。舞の海カンパニーに税務調査が入り、首藤被告が謳っていた「委託料の損金処理」が否認されたのだ。舞の海カンパニー側は直ちに修正申告を行ったが、加算税が課せられることとなった。

さらに'23年夏、今度は舞の海カンパニーが、野村證券と南青山FAS側からの訪問を受けた。舞の海氏がそこで聞かされたのは、「BUONO社が飛んだ」という事実だった。両社の社員から、BUONO側と連絡がつかず、資産となるものも残っていないという状況を説明されたという。

つづく後編記事『元力士・舞の海氏も騙された…！「プレートをつけるだけで節電できる」150億円が動いた投資事件「電気料金削減サービス」にご用心』では、野村證券の回答とともに一連の経緯の深層にさらに迫る。

「週刊現代」2025年4月28日合併号より