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山田哲人はなぜ急激に衰えたのか 早熟の「天才」が若手のときに見せていた「危うい兆候」

今川秀悟
6/9(月) 18:30
ヤクルト・山田哲人(日刊スポーツ)

 最下位に低迷するヤクルトで、心配なのが山田哲人(32)だ。打撃の状態が上がらずに6、7番を打つことが多く、最近の試合ではベンチスタートが増えている。

 今年は左手指の腱を脱臼した影響で開幕を2軍で迎え、4月2日に1軍昇格。5日の中日戦で2回に先制の1号左越え2ランを放ち、プロ野球史上46人目となる通算300本塁打を達成した。 翌6日の中日戦でも2試合連続左越え3ランを放ったが、好調を持続できない。ここまで47試合出場で打率.204、3本塁打、12打点は満足できる数字ではない。

「山田の打撃不振の要因として挙げられるのが、速い直球への対応力です。以前は捉えていた球を空振り、ファールする場面が目立ちます。選球眼の良さに定評がある選手なのに、明らかなボール球に手を出すことが増えている。長打を打った球は真ん中に入った抜けた変化球が多いため、相手バッテリーは速い球で徹底的に突いてきている」(スポーツ紙デスク)

 山田の全盛期はすさまじいものだった。履正社高から2010年のドラフト1位でヤクルトに入団すると、高卒4年目の14年に打率.324、29本塁打、89打点と飛躍し、最多安打(193本)のタイトルを獲得。一気にスター選手として頭角を現した。翌15年は打率.329、38本塁打、34盗塁で自身初のトリプルスリーを達成。本塁打王、盗塁王の同時獲得は史上初の快挙だった。ソフトバンクと対戦した日本シリーズ第3戦では日本シリーズ史上初の1試合3打席連続本塁打も記録した。

 16年には故障で離脱した期間があったが、打率.304、38本塁打、30盗塁で2年連続トリプルスリーを達成。2度目のトリプルスリーは史上初だったが、18年にも打率.315、34本塁打、89打点、33盗塁で、前人未到の3度目のトリプルスリーを達成した。

 ヤクルトでチームメートだったウラディミール・バレンティンは60本塁打(13年)のNPB記録を持つ強打者だが、山田について「あいつは天才だよ。あんな選手を今まで見たことがない」と楽しそうに語っていた。

2021年の東京五輪の野球で金メダルを獲得し、坂本勇人(左)とともに撮影に応じる山田

■恵まれた体ではないパワーヒッター

 ヤクルトや侍ジャパンを取材する記者たちが山田を見た際に、口をそろえて言っていた印象的な言葉がある。

「もっと大きい選手と思ったんですけど、意外に小さいんですよね」

 山田は身長181センチ、81キロ。小柄ではないが、数年前までもう少し細身で、体重は70キロ台だった。筒香嘉智(DeNA)、大谷翔平(ドジャース)、鈴木誠也(カブス)といった当時の侍ジャパンのパワーヒッターたちと並ぶと一回り小さく見えていた。それでも、本塁打を量産し、だれも達成していない複数回のトリプルスリーを成し遂げている。その秘訣はなんだろうか。当時対戦した他球団の打撃コーチはこう分析する。

「ボールにバックスピンをかけて球を飛ばす技術がすごい。あれは教えて習得できるものではありません。大谷と違って、山田のフリー打撃はフェンスを越える打球が少ないんです。でも試合になると本塁打を量産できる。これは、相手の球の速さを利用して反発力で飛ばしているからです。盗塁も足が速いだけでなく、スタートを切るタイミングが抜群にうまい。大谷はもちろんすごいですが、山田も天才ですよ」

 19年6月に通算1000安打を達成。この時に26歳だったことを考えると、2000安打達成は通過点に思えたが、この年から打率が3割に到達しなくなった。20年は打率.254、12本塁打で盗塁数は前年の33から8へと激減。21年は打率.272、34本塁打、4盗塁。本塁打数もこの年が最後の30本塁打超えになっている。昨年は打率.226、14本塁打で、盗塁はわずか1つだった。

 ヤクルトの元トレーナーは、「山田は決して恵まれた体格ではありません。トリプルスリーを3度達成したことで体に大きな負荷がかかっていたことは間違いない。本人にその自覚はないと思いますが、何度も限界を突破したことで生命線だった体のキレが失われているように感じます。近年コンディション不良で苦しんでいるのは蓄積疲労の影響が間違いなくあるでしょう。休養しても元のコンディションに戻るとは限らないですし、休みすぎると練習量が落ちて下半身の粘りがなくなってしまう。調整法で試行錯誤しているように感じます」と指摘する。

■「よくわからないけど、うまく打てた」

 山田は早熟の選手だ。誰よりも早いスピードで階段を一気に駆け上がっていった。「あいつは天才」。チームメートも対戦した選手も口をそろえる。だが、この「天才」という言葉は危うさをはらんでいる。ヤクルトを取材していたライターが明かす。

「山田がまだ若手だったころ、本塁打の打席を振り返って、『自分でもよくわからないけど、うまく打てた』とコメントしていたのが印象的でした。最初は言葉で伝えるのが得意ではないかなと思ったのですが、毎回同じようなコメントをするので感性、感覚で打つ選手なのだなとわかりました。近年の山田を見ると不調の原因が分からずに考えすぎているように見えます。感覚で打っていた選手は、身体能力が落ちた時に立ち返る土台がないので迷走してしまうのでしょう。まだ32歳と老け込む年齢ではないので、もう一花咲かせてほしいです」

 20年オフに7年契約を結んでおり今年が5年目だが、このまま結果を出せないとレギュラーを保証されない立場になる。天才は復活できるか。ファンはその時を心待ちにしている。

(今川秀悟)

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