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65歳で「年金200万円」だったが...70歳での「受取額」に衝撃

長尾 義弘,福岡 武彦
3/1(月) 09:15
「人生100年時代」といわれています。22歳から65歳まで現役で働いていた時間よりも、定年後の時間のほうが長いのです。定年後の避けては通れない課題は「お金」「健康」「生きがい」。これが定年後の3大リスクです。この「3大リスク」をうまくクリアできれば、第二の人生をバラ色にすることがきます。本連載は長尾義弘・福岡武彦著『定年の教科書 お金 健康 生きがい』(河出書房新社)の一部を抜粋し、再編集したものです。

繰下げ受給にも弱点、繰下げ受給に向かない人

公的年金の受け取ることができる年齢は60歳から70歳の間で、65歳未満を繰上げ受給と言って、66歳以降の受取を繰下げ受給と言います。

繰下げ受給をすると、年8.4%の増額になり、70歳まで繰り下げると最大42%の増額になります。これはどんな金融商品と比べても安全でしかも高利回りの商品です。とてもお得だと言うことは前回の記事で紹介をしました(結論!年金の「繰上げ受給」と「繰下げ受給」はどっちが得か?」)。

しかし、繰下げ受給も弱点がありますし、繰下げ受給に向かない人もいます。

加給年金とは、厚生年金の家族手当のようなもので、繰下げ受給をしている間は、加給年金が停止になるという。(※写真はイメージです/PIXTA)
加給年金とは、厚生年金の家族手当のようなもので、繰下げ受給をしている間は、加給年金が停止になるという。(※写真はイメージです/PIXTA)

今回は、繰下げ受給の注意点について解説をしましょう。

「加給年金」を受け取りつつ、繰下げ受給も可能にする方法

繰下げ受給にも注意点はあります。

配偶者が年下の場合は、「加給年金」を受け取れなくなるのです。

加給年金とは、厚生年金の家族手当のようなもので、繰下げ受給をしている間は、加給年金が停止になります。また、加給年金が終わった後は振替加算がありますが、こちらも受け取ることができません。

添付の表で確認していただければわかるように、加給年金はそれなりの額になります。加給年金は受け取ったほうが得な場合が多いといえます。

それでも、繰下げ受給をする方法があります。加給年金に関係するのは厚生年金だけで、基礎年金は関係ありません。ですので、厚生年金だけを65歳から受け取り、基礎年金を繰下げ受給してはいかがでしょうか。

手取りは42%の増額にならなくても結局はお得!

それから、税金についても注意が必要です。繰下げ受給をすると年金の受取金額が大きくなるので、所得税や住民税、社会保険料などが増えます。

税金や社会保険料が高くなるから、繰下げ受給は「損」だという意見もありますが、本当でしょうか。

繰下げ受給をする本来の目的は、年金収入を増やすことにあります。受給額が増えた以上に税金や社会保険料は増えません。また、受給額がもともと少ない人ほど、税金や社会保険料の影響は少ないといえます。

70歳まで繰下げると最大42%の増額になるのですが、手取り金額ではそこまで増えません。税金や社会保険料やお住まいの地域によって住民税が異なってきますので一概にはいえませんが、42%より少なく、35〜32%ぐらいのアップになります。ですので、損益分岐点も、12年より2〜3年ほど遅くなります。

繰下げ受給は「損する」は、本当か?

しかし、それでも繰下げ受給がお得なのです。

例をつかって説明しましょう。たとえば、年金の受給額が年額100万円の人が70歳まで繰下げ受給をすると142万円に増額になります。税金、社会保険料は少しは増えますが、大きくは変わらないでしょう。では65歳の時点で年金の受給額が年180万円の人の場合は、手取り額でいうと162万円くらいです。70歳まで繰下げ受給をすると受取額は、255.6万円に増額されますが、手取り額は、216万円くらいになります。

そのほか、もっと収入が上がった場合には、健康保険の自己負担が2割、1割ではなく3割負担になることもあります。とはいうものの、50万円以上の増額になっています。この増額分が一生涯続くのですから、総受取額で考えると大きな差になってくるのです。

税金や社会保険料が増えるのはイヤだからといって、この得を捨ててしまいますか。たとえ税金や社会保険料が増えたとしても、繰下げ受給はけっして損ではないのです。

給料をアップするといわれた会社員が、所得税・住民税、社会保険料が上がるので給料を上げないでほしいとは、誰もいわないと思います。繰下げ受給も、考え方はそれと似ていると思います。

「年金」とは長生きに備えた保険です

繰上げ受給より繰下げ受給のほうが、長生きの時代には合った方法だといえます。実際は繰上げ受給をする人の割合が圧倒的に多くなっています。どうして繰上げ受給に人気が集まるのでしょう。

人は10年後のことよりも現在のことを優先しがちです。将来の価値より現在の価値を優先して大きく認識してしまうのです。これを行動経済学では「現状バイアス」と呼びます。ここは目先の損得感にわされず、冷静に考えてくださいね。

具体的に繰上げ受給と繰下げ受給の受取総額がどのくらい違ってくるのか、比較してみましょう。

たとえば、65歳の時点で年金受給額が200万円という人が、95歳まで生きたとしたら……。

・60歳まで繰上げ受給をした場合は、30%の減額になります。

60歳での受取金額は140万円 140万円×35年=4900万円

・65歳から受給した場合は、増額・減額はありません。

200万円×30年=6000万円

・70歳まで繰下げ受給をした場合は、42%の増額になります。

70歳での受取金額は284万円 284万円×25年=7100万円

繰上げ受給と繰下げ受給では、2000万円以上の差が出るというわけです。

もちろん、早死にしたら繰上げ受給のほうが得になりますが、人の寿命はわかりません。

そもそも年金は長生きをしたときの保険なのです。早く亡くなれば、それほどお金に困ることはないでしょう。けれど長生きしたら、そのぶんお金も必要となり、足りなくなる可能性があるわけです。

こう考えると、繰下げ受給を選んだほうが合理的ではないかと思います。

長尾 義弘
ファイナンシャルプランナー
AFP
日本年金学会会員

福岡 武彦
株式会社ライフエレメンツ代表取締役
税理士

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