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ビジネスジャーナル

東進ハイスクールのFC企業も倒産...学習塾・予備校等の倒産、過去最多へ

3/31(日) 10:00
「gettyimages」より

「教育関連業者」の倒産が過去最多のペースで推移している。帝国データバンクは2008年以降の教育関連業者の倒産動向(負債1000万円以上、法的整理のみ)について集計・分析した。

 それによると、18年の倒産は91件。17年の倒産は84件で09年(93件)に次ぐ過去2番目の高水準を記録しており、3年連続で増加中だったが、4年連続での増加となった。業態別に見ると、17年に「家庭教師・各種スクール」および「学習塾」の倒産件数がそれぞれ37件、32件と過去最多を記録しているが、18年は「学習塾」でこれを上回る35件の倒産が発生。「家庭教師・各種スクール」も36件と引き続き高水準だ。

「少子化でパイの奪い合いが激化するなか、大手有利な状況が続くだろう。今後は勝ち負けがより鮮明化していく」と語る帝国データバンク情報部の箕輪陽介氏に、教育関連業界のゆくえについて聞いた。

●学習塾の倒産が過去最多を更新

――教育関連業者を取り巻く概況について教えてください。

箕輪陽介氏(以下、箕輪) 教育関連業者の倒産は15~17年まで3年連続で増加しており、少子化による生徒数の減少や競争の激化などから、リーマン・ショック後以上の苦境に立たされています。

 業態別に見ると、「家庭教師・各種スクール」が36件で最多。次いで「学習塾」の35件、「学校・予備校」の11件と続いています(18年)。特に「学習塾」は通年で過去最多の17年(32件)を更新。「家庭教師・各種スクール」も前年と同程度となる36件で、生徒の獲得も含めた競争が激化しています。

――イメージとしては「町の学習塾」が消えていくのですか。

箕輪 大手が参入できず、中規模の学習塾が強みを発揮している地域もあるため、一概にはいえません。地域によっては、昔から評価の高い中規模学習塾が生き残っているケースもあります。ただ、家族や個人経営の学習塾は宣伝力の面で大手に勝ち目がありません。全般的に、教育関連のサービスは消費者の選択肢が広がっていることもあって、業者は“選ばれる経営”を進めていく必要性に迫られています。

――倒産の予兆などはあるのでしょうか。

箕輪 学習塾でいえば、先生の質が下がったり、なんの予告もなく先生が辞めていったりするようなケースは要注意です。裏では、給与の不払いがあったり、より条件のいい学習塾へ流れていたりします。

――やはり、大手より中小・零細が厳しいのでしょうか。

箕輪 負債規模別に見ると、18年では「1000 万~5000 万円未満」が82件で全体の90.1%を占めています。一方で、負債5億円を超える倒産は発生していません。近年、「1000 万~5000 万円未満」の倒産が増加しており、リーマン・ショック以降は全体の7割前後で推移していたのですが、17年に初めて8割になり、ついに9割を超えました。小規模事業者の倒産が急速に増加している点が特徴です。

 教育関連の大型倒産といえば、10年のジオス(英会話スクール、負債62億5900万円)がありますが、それ以来負債額が50億円を超える倒産は発生していません。スケールメリットを生かせる大手は、比較的安定した業容を確保していると見られます。

――大手では、家庭教師のトライがテレビCMなどで積極的に訴求していますね。

箕輪 「アルプスの少女ハイジ」のアニメを利用していたため、家庭教師の効果がわかりやすいですよね。一方、小規模事業者はいくら優秀な先生がいても口コミに頼らざるを得ないため、集客の面では厳しいです。そのため、小規模事業者の厳しい局面は今後も続くと思います。

●苦境の教育関連業者、勝ち負けが鮮明に

――近年の主な倒産事例を教えてください。

箕輪 ひとつ目は、17年3月に民事再生法を申請したモアアンドモアです。東進ハイスクールのフランチャイズ(FC)である「東進衛星予備校」のFC加盟企業として、本部のある神奈川県を中心に東京都、静岡県、愛知県、岡山県、高知県で大学受験に特化した予備校38校を運営していました。

 15年12月期の年収入高は約19億5900万円を計上していましたが、大規模な設備投資に代表個人の借入金を充当していたことから資金手当が追いつかなくなり、自主再建を断念。FC本部であるナガセがスポンサーとなり、事業譲渡を行っています。負債は申し立てベースで47億1200万円です。

 17年8月に破産した創拓社出版は、小・中・高校生を対象とした「個別指導塾まつがく」を主力事業とし、全国に83教室を展開、生徒数は一時4000名程度に達していました。また、家庭教師派遣事業も、関西および九州では「家庭教師のスタート」、関東圏を中心には「家庭教師のオリオン」というブランドで手がけており、16年3月期には年収入高約22億7200万円を計上していました。

 しかし、人件費や拠点維持費などが重荷となり、取引先に対する支払い遅延が発生するようになります。新規事業に参入しても業況は改善せず、事業(個別指導、家庭教師)の大半は別会社に引き継がれています。

 倒産はしましたが、いずれも事業は継続されています。特に個人指導は今後も需要があると思います。ただ、選ばれるような特色を用意しなければ事業継続は困難だということです。たとえば、地方で生き残っている中規模の学習塾などは、安易に拡大路線を目指すより、地元での安定経営を目指したほうがいいでしょう。

――背景には、少子高齢化で子どもの数が少ないという事情があります。いっそのこと、大人向けに英会話教室を展開するなどの施策はどうなのでしょうか。

箕輪 業態変更は失敗する例が多いです。資本力があれば別ですが、たとえば小規模の学習塾が英会話に手を出すのは悪手です。B to Cでいえば、飲食業界が業態変更の罠にハマっています。本業が苦しいので別業態の飲食店に手を出して大失敗するといった例もあるほどです。

――今後の見通しについてはいかがでしょうか。

箕輪 子どもの教育だけでなく、英会話スクールや資格取得の専門学校、eラーニングなど、一般の消費者が学習や教育のサービスに触れる機会は増えています。市場規模も拡大基調にありますが、パイの奪い合いが激化するなかで大手が有利な状況には変わりありません。業者間での業績の格差も指摘されており、今後は勝ち負けがより鮮明になっていくと思われます。
(構成=長井雄一朗/ライター)

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